まじゃすこ / majasco

麻雀の集計係を8年やってわかった、手書きスコア記録の限界

暗算が得意な人間が、集計係になった

麻雀スコア記録アプリ「まじゃすこ」の開発者、むにぃです。麻雀を始めたのは2018年。以来8年間、仲間内のセット麻雀ではほぼ毎回、私が集計係でした。

理由は単純で、暗算がかなり得意だからです。そろばんを習っていたのは1年だけですが、学校では一番計算が速く、今でもその癖が抜けません。ドライブ中に前の車のナンバープレートを見ると、数字を組み合わせて10を作る遊びをする人が多いと思いますが、私は必ず2桁×2桁の掛け算4桁の数字の素因数分解をやってしまいます。半荘が終わるたびに全員の持ち点を聞いて、頭の中で返し点を引き、ウマとオカを足して、順位をつけて、紙に書く。電卓を使う仲間より速かったので、自然と役割が固定されていきました。

ただ、先に白状しておくと——それくらい計算が得意な私でも、麻雀のスコア計算には時間がかかります。数字が中途半端で、マイナスが混ざり、人数分を毎回。この「得意なはずなのに手こずる」感覚が、のちのち効いてきます。

この記事は、そんな「計算に自信がある人間」が8年かけて思い知った、手書きスコア記録の限界についての話です。同じように集計係を任されている方なら、たぶん全部に心当たりがあると思います。

失敗①:検算を省いた結果、「どこかで」合わなくなる

暗算に自信があると、何が起きるか。検算をしなくなります。電卓で確かめ直すのすら面倒で、自分の目でさっと見返すだけで「よし、合ってる」と記録していました。

1回や2回なら、それで問題ありません。問題は回を重ねたときです。5半荘、10半荘と続けたある時点でふと全員の累計を足すと、合計が0になっていない。麻雀のスコアはゼロサム(全員の合計が必ず0)なので、これはどこかで確実に間違えたというサインです。

そこから始まるのが、恒例の「犯人さがし」でした。1半荘目から順に4人分の計算をたどり直す。楽しく打っていた時間が止まり、全員が紙をのぞき込む。ひどいときはこの見直しだけで数十分かかりました。しかも深夜です。疲れた頭で見直す計算ほど、あてにならないものはありません。

麻雀の集計に実際に使っていた電卓と、修正跡だらけのSCORE記録帳
実際に使っていた電卓とSCORE記録帳。二重線の訂正と走り書きが入り乱れているのがわかると思います(名前は伏せています)

失敗②:最終手段は「勝っている人から引く」だった

白状します。どうしてもミスの箇所が見つからないとき、私たちの卓には最終手段がありました。いちばん勝っている人の点数を減らして、合計をむりやり0に合わせるのです。

トップの人は当然いい顔をしません。「なんで俺が減らされるんだ」ともめたことも一度や二度ではありません。冷静に考えれば当たり前で、本人は何も悪くないのに、集計の都合で成績を削られているわけです。それでも「これ以上探しても見つからないから」で押し切るしかない。記録が信用できなくなった瞬間、勝敗そのものが宙に浮く——集計係として、いちばん苦い経験でした。

失敗③:人に任せたら任せたで、別の問題が起きる

「じゃあ集計係を交代すればいいのでは」と思いますよね。試しました。結果、別の問題が起きただけでした。

二重線の修正と書き直しだらけの手書き麻雀スコアシート2枚
別の日のスコアシート。書き直しのたびに二重線が増え、どれが生きている数字なのか一目ではわかりません(名前は伏せています)

つまり、問題は「誰が集計するか」ではなく、手書きと暗算に頼る仕組みそのものにあったわけです。

失敗④:ルールが変わる卓で、自分の立ち位置がわからない

私のグループの普段のルールは「ウマ10-30・オカあり・チップなし」の四麻です。この形なら8年やっているので、頭の中に計算の型ができています。

ところが、別のコミュニティに呼ばれるとルールが変わります。チップありの卓、オカなしの卓、たまに三麻。とくにチップが絡むと、スコアとチップの2本立てになって、「いま自分はトータルでプラスなのか、マイナスなのか」がその場で即答できなくなりました。暗算が得意でも、慣れていない計算の型では役に立たないのです。

これはけっこう本質的な問題で、自分の立ち位置がわからないまま打つのは、単純に楽しくありません。攻めるべきか守るべきかの判断材料も欠けてしまいます。全員が同じ最新の状況を見ながら打てること——それがどれだけ大事か、ルールの違う卓に出るたびに痛感しました。

8年分の失敗から学んだ、「良いスコア記録」の3条件

こうした失敗を重ねて、私の中で結論が固まりました。良いスコア記録の条件は、この3つです。

  1. 検算が自動であること。人間の注意力に頼った検算は、疲労と回数で必ず破綻します。合計0のチェックは、入力のたびに機械がやるべきです。
  2. 誰が記録しても同じ結果になること。字のうまさや暗算力に依存しない。数字を入れたら、ウマ・オカ込みのスコアが同じ手順で自動計算される。
  3. いつでも全員が「今の立ち位置」を見られること。ルールが変わっても、チップがあっても、最新の順位と累計がその場で全員のスマホに見えている。

そして、この3つを満たす道具が見つからなかったので、自分で作ることにしました。それがまじゃすこです。作った経緯は別の記事に詳しく書きましたが、いま挙げた3条件はそのまま設計方針になっています。入力のたびに合計チェックが走り、点数を打つだけでウマ・オカ・チップ込みの結果が出て、URLを共有した全員が同じ画面を見られます。

ウマ・オカの計算手順そのものを知りたい方は、ウマ・オカとは?初心者向けスコア計算入門スコア計算の基本にまとめています。手計算派の方も、せめて「合計0チェック」だけは毎回やることをおすすめします。8年分の失敗から言える、いちばん効く検算です。

8年分の失敗を、4つの型に整理する

ここまでは起きた順に書いてきましたが、8年分をまとめて眺めると、私のミスは4つの型の繰り返しでしかありませんでした。思い出話のままだと次に活かせないので、型として整理しておきます。これから集計係を引き受ける人は、この4つだけ頭に入れておけば十分です。

4つとは、転記ミス(数字を写す段階で壊れる)、計算ミス(写した数字は正しいが処理を間違える)、記録の紛失(数字そのものが追えなくなる)、場の取り決め漏れ(計算する前の前提が決まっていない)です。厄介なのは、後ろの型ほど発覚が遅く、しかも計算をやり直しても直らないことです。合計が0にならないだけなら計算で取り戻せますが、書いた紙が見当たらない、同点時の順位を決めていなかった、という失敗は、その場でどう頑張っても復元できません。

起きやすい場面気づくきっかけ再発を防ぐ習慣
転記ミス持ち点を口頭で聞きながら書く/卓が2つ以上ある/時間が押している桁がひとつ違う数字が混ざっている素点をそのまま書く欄と、計算結果の欄を分ける
計算ミスウマ・オカ・チップと加算要素が多い/いつもと違うルールの卓特定の1半荘だけ合計が0にならない半荘が終わるたびに合計0を確認する
記録の紛失紙1枚で管理/日をまたぐ/場所を移動する/集計係が途中で交代する「前回の続き」を誰も再現できない半荘ごとに累計を確定し、全員が見える形で残す
取り決め漏れ初対面のメンバーが混ざる/途中で人数が変わる/同点や飛びが実際に起きる計算は合っているのに順位でもめる打ち始める前に取り決めを声に出して確認する

この表の使いどころは、もめたときに「どの型か」を先に決めることです。型さえ決まれば、やるべきことは自動的に決まります。転記か計算なら、記録をたどれば必ず正解が出ます。逆に紛失や取り決め漏れなら、たどっても出てこないので、探すのをやめて、その場で全員に決めてもらう方が早い。私が何十分も犯人さがしをして疲れ果てたのは、たいてい「たどっても出ない型」を計算で解こうとしていたときでした。数字を追う手順そのものは点数が合わないときのチェックリストにまとめています。

集計係を引き受ける人に渡したい、5つの習慣

4つの型に対して、私が8年かけて最後に残した習慣はこれだけです。どれも道具がなくても今日からできます。

  1. 素点を、先にそのまま書く。聞いた持ち点をまず書き写し、返し点を引くのはそのあと。暗算と転記を同時にやると、間違えたときにどちらが原因かわからなくなります。
  2. 検算は半荘ごとに。あとでまとめて確認すると、疑う範囲がその日の全半荘に広がります。毎回やっておけば、疑うのは直前の1半荘だけで済みます。
  3. 打ち始める前に、取り決めを声に出す。ウマ・オカ・同点時の順位・飛んだときの扱い・チップの有無。1つでも決まっていない項目があれば、そこだけ先に決めてから始めます。項目の一覧は打つ前に決める10項目チェックリストが使えます。
  4. 記録は二重に残す。紙なら終わりに写真を撮る、画面なら全員で共有する。1か所にしかない記録は、失くした瞬間にゼロになります。
  5. 集計係は審判ではない。ここが一番大事です。疑義が出たときに自分で裁こうとすると、記録する人が当事者になってもめます。決めるのは卓全体、集計係はその結果を書き留めるだけ——と最初に宣言しておくと、驚くほど気が楽になります。

5人以上いて交代しながら打つ日は、これに「誰がどの半荘に座ったか」の記録が加わります。座っていない半荘のptsが本人に足されていた、というのは集計係をしていれば一度は出くわす事故です。交代の回し方そのものは5人以上での回し方にまとめました。ちなみにまじゃすこを作ったのは、この5つのうち1・2・4を機械に肩代わりさせたかったからです。

よくある質問

Q. 集計係は誰がやるのがいいですか?

A. 「計算が速い人」という選び方は、実はおすすめしません。速い人ほど検算を省くからです(私がそうでした)。強いて言うなら、その日席を立つ回数がいちばん少ない人。それ以上に効くのは、係を1人に固定せず、記録を全員が見られる状態にしておくことです。見ている目が複数あれば、転記ミスはその場で止まります。

Q. 合計が合わないとき、どこまでさかのぼればいいですか?

A. 最後に合計0を確認できた半荘までです。裏を返すと、半荘ごとに確認していれば、戻る範囲は常に直前の1半荘で済みます。確認していなければ最初まで戻るしかありません。習慣2をしつこく挙げているのはこのためです。

Q. 打っている途中でルールを変えたくなったときは?

A. 全員が合意したうえで、「次の半荘から」と区切って適用します。終わった半荘にさかのぼって適用すると、その日の記録が全部やり直しになり、結局「取り決め漏れ」の型そのものになってしまいます。変更した時点をスコアシートに1行メモしておくと、あとから見返したときに迷いません。

おわりに

そろばん経験者の集計係が最後にたどり着いたのが「暗算をやめること」だったというのは、我ながら少し笑ってしまいます。でも、計算から解放されて手に入ったのは、単なる時短ではなく、記録がいつも正しいという安心感と、犯人さがしやもめごとのない卓でした。

いま集計係をしているあなたが同じ苦労をしているなら、その役割、そろそろ道具に任せてしまいませんか。

集計係の仕事は、点数を打つところまで。あとは全部おまかせ。

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